久住章氏の仕事に始めての組合参加

― 千鳥ヶ淵パークマンション エントランス・ギャラリー土壁仕上 ―

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誰も知らない人はいないと思いますが、20世紀、21世紀と左官のイメージを一新し、革命的な現場を 数多く残している、久住氏の仕事に初めて東京都左官職組合連合会 平成会として参加致しました。
 今まで東京近郊の久住氏の仕事では、全国に散らばる久住グループと呼ばれる、工芸左官の職人さん 達が集まり工事を施工していましたが、今回は現場も組合本部に近い千鳥ヶ淵であり、旧来から私と 個人的に交友のある久住氏から゛東京の組合の平成会からやる気のある若手を集めて参加しないか? ” との声を頂き、喜んで参加することになりました。

 千鳥ヶ淵の億ションのエントランスということもあり、゛ひと目でお金のかかった壁だなぁという ことが分かりました。「聚楽パネルの上漆喰蛇腹引き」では、聚楽は現場の最後の最後に仕上げると いうイメージがありますが、その聚楽をパネルにして仕上げて現場に搬入し、そのパネルのジョイント 部を漆喰で蛇腹を引くという奇想天外な施工法。「版築風淡路黄土の掻き落し」では、版築というと型枠に土を入れてつき固めるという固定観念から、 塗り付けて剣山や金ノコ掻き落し同じ表情を出す施工法。 「焼き砂殿」という富士山の火山灰、千鳥ヶ淵の関東ローム層の土、未消化の見灰などを混合した素材 にもこだわった “誰がみても土壁だと分かる温かい仕上がり”でした。

仲間たち(竣工時)
ギャラリー(掻き落とし)
聚楽仕上の一部
聚楽仕上の詳細
版築風の掻き落しの詳細
焼き砂壁の詳細

 いつも久住氏の作品を見学するだけで終っていた平成会会員も、実際に現場に参加することにより、 施工途中の段取りの良さ、各職方とのコミニュケーションの良さ、現場の基本は整理整頓、建築は チームという久住氏の働く姿勢など、左官技術はもちろんの事、仕事を始める前の心の準備、取り組み 方も平成会の若手には勉強になったのでないでしょうか。  ただ左官技術、デザイン力を学習するのではなく、素材の性質を熟知し材料の特徴を生かした技術、 久住氏のよくいうソフト面の欠如、仕上がりの悪い職人は腕が悪いという手先の問題として捉える。  いかに能率よく経済的に綺麗に丈夫な壁をつくるか、ということにウエイトが置かれていない今の 若手左官士育成の体制、いつも問題提議をして頂きます。

 1985年から14年間に渡り、ドイツのアーヘン工科大学で教鞭をとり、1999年には左官業界で は初の日本建築学会文化賞という、輝かしい経歴を持つ久住氏ではありますが、私自身もう一つ興味が あるのは、若手育成、後継者育成にたずさわる部門でも特筆していて、長男・次男2人のご子息が2人 共、ずば抜けた左官技術とデザイン力、そして仕事を仕掛ける実行力が素晴らしく、お互いに別々に 業を起し全国、全世界に八面六臂のご活躍であります。  今まで久住語録をまとめた「壁の遊び人」という本にも書いてありますが、″自分の所で修行し4 〜5年経った子でも、家を継ぐために帰っても親父の雑用係になってしまっている。それは親や意気地 がないので、思い切って若い時に独立させて、技術はもちろん仕事に掛ける能力、社会に提案できる力 は自分の頭で考え、自分の力で行動する以外にない″と書かれています。全く同感であります。しかし、 久住氏のような考え方や実行力を持った親方は稀であります。

 日左連としても、多くの職人さんを抱えて経営者として、後継ぎになり苦労している者。又、職人さん と一緒に現場に出て汗して技能を受け継ぎ、親方を目指している後継者。不況の中、懸命に歯を食いしばり 頑張って、左官人生を選択した若者に光を当てて行く様努力したいと思います。
この現場が組合参加の第一歩となりますよう、祈願致します。

東京都左官職組合連合会
平成会会長 阿嶋一浩


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